鉄筋付き鋼製型枠床版



非合成床版における鉄筋付鋼製型枠床版は,力学的には底鋼板は荷重を受け持たないものとして設計される。しかし現実には,鉄筋付鋼製型枠床版を形成する底鋼板と床版は,リベットにより接合されており,繰返し荷重が載荷され,リベットが破断した場合には,鉄筋付鋼製型枠床版の底鋼板が連結箇所において剥がれ落ちる可能性がある。繰返し荷重を受けても鋼板が剥がれ落ちない対策と,鋼板接着が床版の耐久性向上にもたらす効果の検討を行っている。

実構造物の乾燥収縮予測



コンクリートの乾燥収縮は,コンクリート中からの水分の逸散によって生じ,その経時変化は構造物の周辺の温度,湿度等の環境条件,結合材や骨材等の使用材料の種類,コンクリートの配合および部材断面の形状寸法の影響を受ける。したがって,構造物中のコンクリートの収縮を算定するためには,コンクリート中の水分移動解析に基づき各部材のコンクリートの収縮を求めることが望ましい。しかし,コンクリート部材を棒部材と仮定し,コンクリートの収縮によって生じる変形を,平面保持の仮定が成り立つと仮定し簡易的に求める一般的な設計においては,水分移動解析に基づき各部材のコンクリートの収縮を求めることは,現実的ではない。そこで本研究室では,小さな供試体を用いて実構造物に生じる乾燥収縮を予測する手法の検討を行っている。

スラッジ水利用による生コンクリートの環境負荷低減



スラッジ水を練混ぜ水に用いた場合,コンクリートの強度および耐久性への影響は小さい。しかし,スランプは低下し,所定のワーカビリティーが損なわれることにスラッジ水利用の問題がある。グルコン酸のような低分子化合物の凝結遅延剤をスラッジ水にあらかじめ添加しておけば,セメントの水和が抑制されることでスランプの低下を小さくできる。しかし,高分子化合物の中にも,スラッジ水を用いたモルタルのフレッシュ性状を改善できる性質のものもあり,それらを組み合わせることでコンクリートの凝結時間をより精度よく調整できる技術の開発を行っている。

硫酸劣化の著しい下水道施設に適用が期待されるコンクリート


下水道施設など,バクテリアの作用によって硫酸が生成される環境下においては,設計で想定した供用期間よりも早期にコンクリート構造物が劣化している。本研究室で開発した硫酸に強いコンクリートは,主原料に鉄を製錬するときに発生するスラグを用いることで,普通のコンクリートに対して6倍の耐久性を持つものである。岡山県の水島地区でも多く発生している鉄鋼スラグの量は,全国で年間約3,800万トンで,家庭ゴミの量に匹敵している。本技術は,資源循環と構造物の長寿命化を両立させる技術として注目されている。